心不全の治療において、高血圧の薬が多く使われるのには理由があります。それは、高血圧が、心不全の主要な原因や悪化因子となることが多いからです。高血圧の治療が、そのまま心不全の治療になることが多いです。高血圧の治療をすると心不全になって息切れなどの症状の発症を予防することにもなります。さらに、高血圧の薬は、腎臓にも良い影響を及ぼすものもあります。高血圧の薬物治療は、心臓、腎臓、脳血管などの動脈硬化を予防することを目的にしていて、各臓器の特性に合わせた選択が必要です。
高血圧と心不全の関係
高血圧は、心臓への負担が増加します。高血圧は心臓に余分な負担をかけ、心筋が厚くなる(左室肥大)などの変化を引き起こします。これが長期的には心不全を引き起こす原因になります。
高血圧は血管の損傷を起こします。高血圧は血管を傷つけ、動脈硬化や冠動脈疾患(心筋の血流が低下する疾患)を引き起こします。これが心臓のポンプ機能を低下させる結果となります。
心不全治療でよく使われる高血圧の薬には次のような種類があります。
ACE阻害薬やARB
共に血圧の調節に関係するホルモンを調整する薬です。
血管を拡張し、心臓への負担を軽減します。また、心筋リモデリング(心筋の変性・変質)を防ぐ効果もあります。
β遮断薬
心臓の負担を取る薬です。
心拍数を減少させることで心臓のエネルギー消費を抑え、心機能を改善します。
利尿薬
体内の余分な水分を排出し、浮腫や肺うっ血を軽減します。
カルシウム拮抗薬
血管を広げて血圧を下げる役割があります。心不全のタイプによって使い分けられます。
以上のような薬が高血圧の治療だけでなく、心不全の症状緩和や進行抑制にも役立ちます。高血圧だけではない、心臓や腎臓への影響を考慮して治療薬剤は決められています。