それぞれの症状について

浮腫(むくみ)

浮腫とは?
浮腫(むくみ)とは、サードスペースと呼ばれる組織間質への過剰な体液の貯留のことです。下肢の浮腫の原因は、さまざまな病気や状態によって引き起こされる可能性があります。下肢の浮腫とは、足や足首、ふくらはぎなどの下半身に水分が溜まって腫れることを指します。下肢の浮腫は、一時的なものである場合もありますが、持続的なものである場合は、重篤な健康問題の兆候である可能性があります。
早期の診断が望まれる深部静脈血栓症の可能性がないかどうか疑ってみることは大切です。
下肢の浮腫の原因
下肢のむくみの原因を列挙してみます。長時間の立ち仕事や座り仕事、飛行機や車での移動などで、下半身に血液が溜まる場合。妊娠や月経前などで、ホルモンバランスが変化する場合。高血圧や心不全などで、心臓が血液を十分に送り出せない場合。腎臓や肝臓の機能障害で、体内の水分や塩分の調節がうまくいかない場合。血栓や静脈瘤などで、血液の流れが妨げられる場合。薬剤の副作用で、水分の排出が抑制される場合。腹部の手術歴があり、下肢の静脈の流れやリンパの流れが悪くなる場合。腹部や骨盤内に腫瘍などが存在し、静脈の流れやリンパの流れが悪くなっている場合。
両側性(全身性)浮腫と片側性(局所性)浮腫に大別
片側性の浮腫の場合、深部静脈血栓の可能性があるので、特に注意が必要です。腹部や骨盤内の手術歴や腫瘍の場合には、両側の下肢の全般的な浮腫が生じます。多彩な原因があるため、具体的例を列挙してみます。
深部静脈血栓症
片側性浮腫が多いですが、両側のこともあります。足の痛みや腰の痛みなどで活動性が低下した場合に見られることがあります。見逃してはいけない疾患の一つです。
下肢静脈瘤
片側性浮腫が多いですが、両側のこともあります。長い経過の場合、皮膚のかゆみ、色素沈着、浸出液がでたり、皮膚の潰瘍も認められることもあります。皮膚から怒張した表在静脈が見れることが多いです。下肢静脈瘤と思われて、深部静脈血栓症が隠れていることもあるため、注意が必要です。
うっ血性心不全
両側性浮腫がみられます。
ネフローゼ症候群や肝硬変
両側性浮腫がみられます。
リンパ管閉塞
局所的なリンパ浮腫がみられます。
甲状腺機能低下症
両側性浮腫が出現することがあります。
特発性浮腫
月経のみられる若年から中年女性に好発します。両側下腿の圧痕性浮腫が特徴です。立位になっていると増悪し、朝夜(夜が重い)の体重差が1.4㎏以上となる疾患です
対応
一般的な採血、尿のスクリーニング検査(甲状腺機能検査を含む)に加え、心不全の状態を検出する心エコー検査、下肢静脈エコー検査、Dダイマー検査、BNP検査、腹部骨盤内の異常を探るべくCTまたはエコー検査を施行します。診断に基づき対処をします。診断がつかず、症状の改善がない場合、高次機能病院へ紹介も考慮します。
具体的な対処方法の例
診断に対する適切な対応が必要です。
特に深部静脈血栓症は緊急性がある場合があるため、早期の抗凝固療法を勧めます。その際、日頃から出血しやすい人かどうか、現在出血しやすい場所はないかを伺います。例えば、消化管出血をしたことがあるとか、痔、鼻出血や糖尿病などで眼底出血があるとか、気になる点を担当医に伝えてください。
下肢の浮腫は、単純に足を高くして休むことやマッサージをすることで改善する場合もありますが、痛みや赤み、発熱などの症状がある場合や、浮腫が長期間続く場合は、医師に相談することが必要です。下肢の浮腫は、適切な診断と治療を受けることで予防や改善が可能です。
動脈血管障害がない場合は、弾性ストッキングは有効と考えています。さらに弾性ストッキングを着用した状態での足関節運動、竹踏みによる足底圧迫や歩行運動は、症状改善に有効です。弾性ストッキングが不快な方、痛みを伴う方、病態上避けるべき方は、下肢の用手マッサージも有効です。お困りの方はご相談ください。