循環器内科
低用量ピルによる静脈血栓症
低用量ピルによる血栓症とは?
低用量ピルには、避妊、月経不順の改善、過多月経の改善、月経前の不快症状、肌荒れの改善、月経痛の緩和などの効果があります。また、子宮体癌、卵巣癌、大腸癌のリスクを下げるとされます。そのため近年低用量ピルを内服する方が増加しています。しかし、ホルモンバランスの変化などによる副作用が出現することがあります。低用量ピル使用で、吐き気、だるさ、頭痛、下腹部痛、胸のはり、むくみなどが出現する方がいます。 副作用で、発生頻度は高くないですが注意しなければならないのは「血栓症」です。血栓症とは、血液に小さな塊ができて肺、心臓、脳などの血管を詰まらせてしまう病気です。重症な場合には命に関わることもあります。
静脈血栓症の頻度
低用量ピルによる静脈血栓症は、低用量ピルの副作用の中でも最も重大なものの一つです。静脈血栓症とは、静脈内に血液が固まって塞がる病気で、重症化すると肺塞栓症や心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こす可能性があります。低用量ピルに含まれる女性ホルモンは、血液の凝固能力を高める作用があるため、静脈血栓症のリスクを増加させます。しかし、低用量ピルによる静脈血栓症の発生率は非常に低く、年間1万人当たり3〜9人程度と報告されています。特に持病がない健康な方は、正しく低用量ピルを服用していれば、血栓症の心配はほぼありません。低用量ピル服用時での血栓症のリスクは、妊娠中・出産後よりも低いとされています。
症状
ごく軽微なものから重症なものまで幅広いです。静脈血栓塞栓症は、一度軽症で発症しても、急速に重篤になることもあるため注意が必要です。
以下に注意すべき症状を上げます。 1. ふくらはぎの痛み 2. 足のむくみ 3. 激しい腹痛や胸の痛み 4. 胸が押しつぶされるような痛み 5. 激しい頭痛 6. 突然の息苦しさ 7. 視野が狭くなる 8. 冷や汗 9. 意識障害 10. 失神
低用量ピルによる静脈血栓症の予防法
以下のことが挙げられます。
・喫煙をやめる
・肥満を改善する
・適度な運動をする
・水分を十分に摂る
・長時間の安静を避ける
症状が出た場合の対応方法
1. 血栓症状が気になったら、低用量ピルを処方いただいている主治医または病院に報告してください。対応方法の指示をいただきましょう。
2. 経皮的酸素飽和度が参考になります。SAT 95%以下は問題ありです。 診断治療が可能な専門家への早めの受診をお勧めします。
3. Dダイマーの採血検査と下肢静脈エコ―は、下肢静脈の血栓症の診断に非常に有効です。経皮的酸素飽和度、心電図、胸部X線写真、心エコー検査も肺動脈血栓塞栓症の診断に有用です。静脈血栓症の診断がついたら、抗凝固薬による早期の治療が必要です。