院長ブログ

【心不全】猛暑中の脱水予防。水分制限は体重次第。

院長 宮本貴庸


山形大学医学部 卒業
武蔵野赤十字病院循環器科 部長
東京医科歯科大学医学部 臨床講師
武蔵野赤十字病院総合診療科 部長
東京都教職員互助会 三楽病院循環器内科 部長
武蔵野赤十字病院循環器内科非常勤医(水曜日)として勤務中

水分制限に関する質問の背景

暑くなると、心不全の患者さんから水分制限についての質問が多く寄せられます。これから連日、テレビなどで水分を取りましょうと脱水の予防法について報道されると思われます。心不全の患者さんは、医師から細かな指示がなされていると思います。昨年に引き続き今年も猛暑が予想されるとなると、情報の板挟みになり、不安になる方も多いと思います。

脱水症の概要と症状

脱水症は、体内の水分が不足することで起こる状態であり、特に高温多湿の夏季や乾燥する冬季に注意が必要です。脱水症の初期症状には、喉の渇き、頭痛、めまい、食欲不振、尿量の減少などがあります。これらの症状が見られた場合は、速やかに水分を補給することが重要です。特に高齢者や小さな子供、慢性疾患を持つ人々は脱水症になりやすいため、日常的に十分な水分を摂取することが推奨されます。

心不全患者の水分摂取のリスク

一方で、心不全の患者さんでは、水分が多いと循環血液量が増加して心不全になります。高温で脱水になる可能性があるものの、水分や塩分のとりすぎは心臓にとって危険です。

身体状況の確認の重要性

まず、状態の良いときの身体状況の確認が大切です。状態が良いときの、ご自身の身長、体重、血圧、脈拍を確認しておきましょう。

体重と水分量の関係

心不全では、体重で水分量を推定します。医師から一日飲水量を指定されることもありますね。私の場合、一日飲水量は、あくまでも目安の意味合いと思っています。一日飲水量より体重の増減が、心不全管理には重要と思います。記録的な猛暑の中で外出もしていた場合などは、脱水になる可能性があります。体重が理想とする体重より減ってきたら、脱水です。水分を取る方向で考えましょう。一般に理想体重までは、水分や塩分の摂取を緩めても良さそうと思います。口渇があり、脈拍が上昇したりした場合には、脱水が疑われます。担当されている医師にご相談されると良いと思われます。

主治医との相談の重要性

病気の程度が様々で、標準化は困難です。ご自身の主治医と十分にご相談いただいたほうが良いのですが、飲水制限で困っている方もおられるため、参考になさってください。

自宅でできる心不全の管理方法

  1. 毎日体重測定
    心不全の方は、ぜひ行いましょう。一日の測定する時間は、決めたほうが良いです。朝食前が良いでしょう。状態が良いときの体重が理想体重と考えて、そこからの変化に注目する。体重が増加したら心不全傾向、減少したら脱水傾向と考えます。
  2. 自宅で血圧測定、脈拍測定
    急な血圧上昇や低下に注目します。脈拍測定で、安静にも関わらず100/分以上のときは、体重低下があれば脱水傾向が疑われます。要注意と考えます。
  3. 経皮的酸素飽和度の測定
    日頃から測定し、ご自身のデータを測定しておきましょう。深呼吸後に測定し95%以下は、やはり心配です(深呼吸後2-3分程度してから経皮的酸素飽和度へ反映することが多いので、すぐに良くない値が出ても大丈夫です)。これに体重増加があれば心不全が疑れます。経皮的酸素飽和度測定では、同時に脈拍も測定されいるはずです。これも安静にも関わらず100/分以上のときは、心不全か脱水か不明ですが、要注意と考えます。