院長ブログ

人工弁置換術後の留意事項

院長 宮本貴庸


山形大学医学部 卒業
武蔵野赤十字病院循環器科 部長
東京医科歯科大学医学部 臨床講師
武蔵野赤十字病院総合診療科 部長
東京都教職員互助会 三楽病院循環器内科 部長
武蔵野赤十字病院循環器内科非常勤医(水曜日)として勤務中

人工弁置換術は、心臓の弁が狭くなったり、漏れたりして正常に働かなくなった場合に行われる手術です。人工弁置換術後は、以下のような留意事項があります。

現在では、心臓弁の治療法は発展してきており、必ずしも抗凝固療法が必要ではない方も増加しています。生体弁や弁の形成術の場合には、必ずしも抗凝固療法が必要ではないとのことです。抗血小板療法などの代替療法を推奨されることもあります。手術をした施設の先生に確認しておくことをお勧めしています。

抗凝固薬の服用

人工弁は、血液が固まりやすくなるため、血栓や塞栓症のリスクが高くなります。そのため、抗凝固薬という血液をサラサラにする薬を服用する必要があります。抗凝固薬の種類や量は、人工弁の種類や患者さんの状態によって異なります。医師の指示に従って、定期的に血液検査を受けて、適切な抗凝固度を保つようにしましょう。また、抗凝固薬は出血しやすくなる副作用があるため、出血に注意する必要があります。歯磨きや髭剃りなどで出血した場合や、鼻血や吐血などの症状があった場合は、医師に相談してください。

感染症の予防

人工弁は、細菌やウイルスなどの感染源に対して抵抗力が低いため、感染性心内膜炎という重篤な合併症を起こしやすくなります。感染性心内膜炎は、歯科治療や手術などで口腔内や皮膚に傷ができた際に、細菌が血液に入り込んで人工弁に付着することで発症します。感染性心内膜炎は、発熱や倦怠感、体重減少、関節痛、皮下出血などの症状を引き起こし、放置すると心不全や脳卒中などの重大な合併症を引き起こす可能性があります。そのため、感染性心内膜炎の予防として、以下のことを守る必要があります。
歯科治療や手術などを受ける前には、必ず医師に人工弁置換術を受けたことを伝えてください。必要に応じて、抗生物質を予防的に服用することがあります。
口腔内や皮膚の清潔を保ちましょう。特に歯周病や虫歯などの口腔内感染を防ぐために、毎日歯磨きをして歯科検診を受けましょう。
熱や倦怠感などの感染性心内膜炎の兆候があった場合は、医師に相談しましょう。