高血圧は、日本人の20歳以上の2人に1人が診断されるほど身近な病気です。高血圧は、心臓や脳、腎臓などの重要な臓器に障害を引き起こす危険な病気です。高血圧かどうかを知るためには、定期的に血圧を測定することが必要です。家庭で血圧を測定することは、自分の血圧の状態を把握し、適切な治療や生活改善に役立ちます。
家庭血圧測定のエビデンス
診察室で測定する血圧よりも家庭で測定した血圧の方が、心血管疾患の発症リスクや予後予測に優れるということが示されています。例えば、大迫研究では、家庭血圧が収縮期で135mmHg以上、拡張期で85mmHg以上の場合に高血圧と定義し、この基準値を超えると心血管死亡リスクが上昇することを報告しています。
また、家庭血圧は診察室血圧よりも脳卒中や脳梗塞の発症リスクと強く相関することも示されています。このように、家庭血圧測定は高血圧の診断や治療において重要な役割を果たすことがエビデンスに基づいて認められており、日本高血圧学会や欧州高血圧学会などのガイドラインでも、家庭血圧測定は推奨されています。
家庭血圧測定の方法
測定する位置は上腕部が推奨となっています。手首式もありますが、血圧測定値の変動が大きい印象です。上腕部の血圧は心臓の高さに近く、最も安定しています。上腕カフ血圧計を使用し、カフの中心が上腕動脈と一致するように巻きます。
測定時の条件は、朝は起床後1時間以内、排尿後、朝食や服薬前に、晩は就寝前(飲酒や入浴後は避ける)に行います。すべて血圧測定するのは大変と思われますので、理想と現実的なやり方は違うことを認識して、あくまでもご本人の都合に合わせてできる範囲で継続するのがいいと考えています。血圧測定前には、座った姿勢で1〜2分間安静にすべきとされています。私は、1-2分の安静でも血圧変動が大きい場合には、5分程度の安静にすることを患者さんにお勧めすこともあります。しかし血圧を測るために、朝の大切な時間が少なくなると患者さんから不満をいただくこともあります。測定前の安静時間は、あくまでも目標としてお考えいただければと思います。測定回数は朝晩各1回以上です。測定するときは2回ずつ行い、平均値を記録します。朝1回だけと決めて、そのようにされている方もおいでになります。1回か2回かなどの測定形式は、あまり変化させずに長期にわたり測定していただきたいです。その他の注意点としては、血圧は計測するたびに値が変わり、一定ではないことを理解していただくことです。
高血圧の治療に役立てるために、ご家庭での血圧の記録を、ご担当いただいています医師にご覧いただくのが良いと思います。朝夕で測定されるなど測定ポイントが増えると、降圧薬の選定や変更に役立ちます。また、高血圧の治療をしていながら、夕方など低血圧にとなっておりフラフラしたり眠くなったり、作業効率が低下しているなどの状態が出現している場合もあり、血圧治療で気になる症状が出現したら気軽に血圧測定をして、症状と血圧の関係性などについてご相談ください。