院長ブログ

隠れ心房細動【自宅血圧測定で発見した事例】

はじめに】 

 不整脈の一種の心房細動は心不全や、血の塊(血栓)により脳梗塞を起こす恐れがあります。症状に気づかず、通常の検査で見つかりにくいケースも少なくありません。
 クリニックの定期診察でも、ちょっとしたことから診断されることがあります。
最近の当院での事例を共有します。

共有事例】 

 当院では、高血圧の治療の効果判定に自宅血圧測定を推奨しています。先日、当院通院中の患者さんから、上の血圧が上下するようになったとの訴えがありました。ご自宅の血圧表を拝見しますと、上の血圧が160mmHgになったり120mmHgになったりしていました。以前と比べると明らかに、血圧の変動が激しくなっていました。患者さんは、症状の変化はないといいます。血圧の表では、血圧が下がっているときに、脈拍が早くなっているようでした。
 私は、患者さんに、血圧の変動は、不整脈の出現による可能性が高いこと、不整脈は、脳梗塞を引き起こす心房細動の可能性もあること、検査をして診断した方が良いことをお伝えしました。患者さんは、症状が乏しいため、検査をあまり受けたくない方でしたが、検査に同意されました。心臓の負担を見るマーカーのBNP検査を施行しますと、以前より上昇しておりました。当院受診時の心電図は、今まで心房細動の所見は記録されていませんでしたが、24時間心電図検査を行うと心房細動が記録されていました。
出血の既往や懸念を伺いましたが無いようでした。ガイドライン通りに、抗凝固薬の出血の危険性と利点をお伝えし、取り急ぎ、脳梗塞予防の抗凝固薬の内服をおすすめしました。また、心臓の頻脈を整える薬の併用を開始しました。
 心房細動を引き起こす心臓基礎疾患の調査のために、心臓超音波検査を施行しました。左心室の収縮能は優れていて弁膜症も明らかではないものの、左心房の大きさがすこし大きいようでした。採血検査、尿検査、胸部X線検査なども考慮して、心房細動を改善させるための治療法の検討を行いました。現在、患者さんのご希望を伺いながら、治療の反応をみています。

まとめ】 

 以上のように、隠れ心房細動は、思わぬところから診断されることがあります。
家庭血圧測定、体重測定、検脈などによって、日頃からご自身の状態を把握することは、大病を予防することに繋がること考えます。
 通常状態と変化があった場合には、医師にご相談ください。様子を見て良いものと詳しく追求すべきことの相談ができると思います。

執筆者
院長 宮本貴庸
武蔵野赤十字病院循環器科 部長
東京医科歯科大学医学部 臨床講師
武蔵野赤十字病院総合診療科 部長
東京都教職員互助会 三楽病院循環器内科 部長
武蔵野赤十字病院循環器内科非常勤医(水曜日)として勤務中