それぞれの症状について

胸痛(狭心症)

狭心症の胸痛について
狭心症とは、心臓に血液を供給する冠動脈が狭くなることで、心筋に十分な酸素が届かなくなる状態です。このとき、心筋に負担がかかると、胸の中央や左側に圧迫感や痛みを感じます。これが狭心症の胸痛です。
狭心症の胸痛は、運動やストレスなどで起こりやすく、休息や薬物で改善することが多いです。しかし、冠動脈の狭窄が進行すると、胸痛が頻回に起こったり、持続したり、重篤化したりする可能性があります。
これは心筋梗塞の前兆である不安定狭心症と呼ばれ、重大な合併症を引き起こす危険性が高いです。
また、少しの胸の痛みは、よく経験されますが、いつもと違う胸部症状が出現した場合には、常に緊急性の高い疾患から除外していく姿勢が大切と考えています。
したがって、狭心症の胸痛を感じたら、早めに医師の診察を受けることが重要です。
不安定狭心症
安静にしている状態でも胸が痛むのか、心臓に負担かけた労作時にのみ胸が痛むのかが大変重要です。
安静でも持続的に胸が痛む状態があれば、基本的に早く検査が必要です。その場合、不安定狭心症を考えます。
不安定狭心症は、急性心筋梗塞に発展する可能性がある大変危険な疾患であるため、対応方法に注意が必要です。
煙草を吸う方、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症の方、親類に、男性で55歳以下、女性で65歳以下の狭心症、心筋梗塞の方がいる方の場合、詳しい検査をお勧めします。
冠攣縮性狭心症
安静で胸痛が生じる場合、冠動脈のけいれんが原因の冠攣縮性(かんれんしゅくせい)狭心症の可能性があります。
冠動脈のけいれんが原因の狭心症は、発症が気まぐれであるため外来での検査で診断することは困難であることがあります。
冠攣縮性狭心症の胸痛の特徴は、いつ何時起こるか予測しにくいことです。24時間ホルター心電図を施行しても、発作頻度が少ない場合には、心電図変化が記録できないこともあります。
胸が痛くなったら、ニトロペン1錠を舌下し(舌の下に入れて、溶けるのを待つ)病態を推定するのは有効です。
患者さんから主治医に、症状の変化や改善までの時間を報告いただくのが診断に有効です。
症状から病態の推理が必要で、患者さんと協力が必要な疾患です。
動脈硬化性の狭心症
運動の強度に応じて胸が痛くなる場合には、動脈硬化性の狭心症が疑われます。
運動時に胸痛が出現する胸痛が特徴の狭心症です。
ある一定の運動量以上(指標のたとえ:収縮期血圧×脈拍)で症状が再現される特性があります。
冠攣縮性狭心症とは対象的に、動脈硬化性狭心症は、運動に応じて胸痛が出現する几帳面なものです。
やはり多くはニトロペンが有効で、胸痛時にはニトロペンを舌下して症状変化を、主治医にご報告ください。狭心症の検査の多くは、動脈硬化性狭心症の診断のために開発されたようなもので、診断精度も高いです(ストレス心筋シンチ、造影心臓MRIや冠動脈CTなど)。これに対し、冠攣縮性狭心症の場合には、冠動脈の狭窄の発生が気まぐれなため、それらの検査機器でとらえられないことも多いです。
冠攣縮性狭心症の方をたくさん長期に診察させていただくと、動脈硬化性狭心症へ移行する方もいらっしゃいます。
二つの疾患が全く別物と考えずに、胸痛の状態変化に合わせて柔軟に検査と治療を行うことが必要と思われます。
治療方法
冠攣縮性狭心症は、基本的には薬物療法を施行します。
動脈硬化性狭心症は、薬物療法、冠動脈内インターベンション(PCI)、冠動脈バイパス術の中から必要な選択を行います。
必要があれば入院し、カテーテル検査を施行し、PCIを施行することも多いです。
冠動脈のステント治療やバイパス術後の場合、薬物療法を継続する必要もあります。
細かな要件は患者さん毎に異なりますので主治医に確認が必要です。  
治療後の再発予防のための内服治療も必要です。適度な運動は、動脈硬化予防、心不全予防、心臓発作予防の点で有利ですので主治医とご相談の上、必要量を行ってください。